ヒクメット「日本の漁夫」

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 日本の漁夫
                      ヒクメット/大島博光訳

大洋のうえで 雲に殺された
   日本の漁夫は 若ものだった
かれの仲間がわたしに歌ってくれた
  ある日ぐれ太平洋で出会った物語を

獲ったこの魚をたべるものは死に
   わしらの手にさわるものは滅びる
見よ わしらの船は長く黒いひつぎ
   この船に乗るものは命をうしなう

獲ったこの魚をたべるものは死ぬ
   すぐにではなく徐々に蝕まれて
肉はくさり くずれおちる
   獲ったこの魚をたべるものは死ぬ

  わしらの手にさわるものは滅びる
太陽と砂にまみれた わしらの塩辛い手
仕事に疲れを知らぬ わしらのまめやかな手
  わしらの手にさわるものは滅びる
すぐにではなく徐々に蝕まれて
  肉はくさり くずれおちる
  わしらの手にさわるものは滅びる

切れながの眼をした妻よ わしを忘れねばならぬ
見よ わしらの船を 黒い冷えきったひつぎを
  この船に乗るものは命をうしなう
わしらのまうえに 雲がすべりおちたのだ

切れながの眼をした妻よ わしを忘れねばならぬ
  妻よ わしを抱いてはならぬ
  死がわたしからおまえへ乗り移るから
切れながの眼をした妻よ わしを忘れねばならぬ
見よ わしらの船を 黒いつめたい柩を

切れながの眼をした妻よ わしを忘れねばならぬ
  おまえがわしから生む子どもは
  くさった卵よりも早く潰えよう
黒い柩のようなわしらの船はわしらを運び
  この海は死の海だ
ひとびとよひとびとよ わしらはあなたらに叫ぶ!


◯ わたしたちのねがいがきかれず、太平洋上での核実験が再開された折から、今月の訳詩は近刊予定の大島氏の訳詩集からヒクメットの作品をえらんだ。これは第五福龍丸のことだけうたっているのでなく、きょうまた太平洋上でおきつつあることをうたっているのだ。この一頁が平和のためのチラシにもなるように。(立岡─編集後記)
<『角笛』23号 1962.8>
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