ロルカ「雄山羊」

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 雄山羊
       フェデリコ・ガルシア・ロルカ/大島博光訳

雌山羊の群が通って行った
岸べの水のほとり

ばらとサファイアの夕ぐれ
雌山羊たちをみちびく雄々しい雄山羊に
わたしは見とれる

こんにちは むっつりした悪魔よ
きみは
とても気の多いけだものだ
肉の
地獄の
永遠の狂信者・・・

きみのひげと
ひろい額の
なんという逞(たく)ましさ
粗野なドン・ジャンよ
なんと思いのこもったきみの眼ざし
情熱の
メフェストフェレスよ

きみの女たちを連れて
きみは野に行く
サルタンでありながら
宦官のように
きみの性の渇きは
けっして鎮まることがない
父親の牧神(パン)の名を汚さない
性の見習い!

恋に落ちた つつしまやかな雌山羊は
きみのあとをついてゆく
静かな足どりで
きみの情熱は飽くことを知らない

古代ギリシャは
きみのことがよく分っていた

おお 聖なる伝説の奥からやってきたものよ
黒い岩や巨大な十字架のあいだで
馴らされたけものや深い洞窟のなかで
悪魔と痩せた苦行者たちは見た
闇のなかで
性の炎を
吐いているきみを!

おお 雄々しいひげを生やし
角を生やした雄山羊よ
中世世界の黒い縮図よ
きみは 清らかな海の泡のなかの
フィロムネード(*1)の傍で生まれた
そしてきみの唇は
彼女を愛撫しながら
星の世界を驚かす

雄山羊たち きみたちはやってくる
嵐が光となる 露だらけの森から
不死なるものの血に浸る
アナクレオン(*2)の牧場から

おお 雄山羊たち きみたちは
消えうせた種族
古代サチュロス(*3)たちの変身なのだ
地上のどんな動物にもまして
きみたちは惜し気もなく濫費する
手つかずの好色を

「大いなる真晝」の空想家たち
きみたちの歩みを停めて
野の奥の声を聞きたまえ
雄鶏はきみたちに告げる
こんにちは 通ってゆくきみたち!

訳注*1 フィロムネード──不詳。
  *2 アナクレオン──愛を歌ったギリシャの詩人。
  *3 サチュロス──ギリシャ神話で、半人半獣の好色な森の神。

<自筆原稿 1996>
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