アラゴン「ひき裂かれた恋びとたち」

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 ひき裂かれた恋びとたち
                      ルイ・アラゴン

駅で 悲壮な身ぶり手ぶりで 暗い心の叫びを
話し合っている あのつんぼ盲(めくら)の人たちのように
ひき裂かれた恋びとたちも 狂おしい仕ぐさをする
冬と武器との 白じらとした静けさのなかで
夜夜 のトランブ遊びのあとに 夢がもどってきて
恋びとたちが燃えるような手を 雲のなかで
握り合っても ああ それは鉄の鳥たちの世界
おお 野のロメオたち もう うぐいすも
雲雀(ひばり)もいないのだ 地獄と化した空のなかには


木木も 人間たちも 家々の壁も 灰色だ
くすんだ歌のように 思い出のように 灰色だ
それがみんな ぐらぐら揺れ動いたのだ
いちめん 雪に蔽われた 世界のなかに
死ぬほどにも悲しい手紙のついたとき
だが 死ぬほどにも悲しい手紙のなかにも
愛はやはり アルペジオを見いだすのだ

冬は からっぼの留守宅にも似ている
冬は 水晶だけが 歌をうたっている
酒も凍りついて 香りが消えうせる
愛の歌(ロマンス)も のろのろと 手間どる
そしておれの胸をしめつける音楽が
鳴りひびき 鳴りわたり 時を告げる

針は廻わり 時は 歯ぎしりする
針は廻わり 時は 歯ぎしりする

金色の髪をした妻よ おれの菊の花よ
おまえの手紙は なぜこんなに苦(にが)いのか
海のまんなかで 難破した男のように
おれは おまえを呼びもとめているのに
おまえの手紙は まるで叫んでいるようだ
吹き狂う あの風(1)のざわめきをもっても
あの罪におののく 身ぶるいをもっても
消すことのできぬ それは叫びなのか

愛するものよ おれたちにはもう言葉しか
おれたちの口紅しか 残っていない
その凍りついた言葉で 捉えるのだ
ジェーブルの 城の堀のなかに
希望もなしに昇ってきては 夢みて
よろめき 死に またよみがえる陽(ひ)を
城で ラッパがおれのために鳴っていた
城で ラッパがおまえのために鳴っていた

おれは言葉でつくろう おれたちのただ一つの宝を
聖女たちの足もとにささげる うれしい花束を
そうしておまえに差し出そう あのヒヤシンスを
郊外のリラの花々を 青いベロニカの花ばなを
「五月」の縁日に売っている 枝についたままの
ビロードの巴旦杏を 鈴蘭の白いつり鐘を
おれたちなら 咲く前には摘みに行かぬのに
ああ その前では 花のような言葉もうなだれる
その花花は あの風のひと吹きで 散り落ちて
人びとは つるにちにち草に似た眼をとじるのだ
だが おまえをかぎりなく愛するこの心臓に
赤い血の脈うつかぎり おれはおまえのために歌おう
そのリフレーンが つまらぬ歌と見えようが
この月並みで すり切れた心のつぶやいた言葉が
いつか すばらしい世界の前ぶれとなるだろう
そのとき おまえひとりは知ってくれよう
太陽がかがやき 愛が身を願わせているかぎり
秋のさなかに 春を信じて なぜ悪かろうと
おれは人間として歌いつづけよう つまらぬ歌を

(1)「あの風」「あの罪におののく・・・」──いずれも、ドイツ及びフランス当局の弾圧、監視、検閲を意味している。

<『アラゴンとエルザ 抵抗と愛の讃歌』──断腸詩集 1971年>

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