小組曲
大島博光
ひとりの詩人がうたう
わたしがここへやってきたのは
人間のなかの人間をうたうためだ
ひとりの詩人がうたう
わたしは プロメテのように
火をくばって歩きたい
孤独が泣いている暗い部屋のなかに
若い恋びとたちの胸のなかに
ほのかな火をともして歩きたい
だが プロメテも 核のような
全人類を焼きつくすような
悪魔の火は盗まなかった
偽のプロメテの手から
偽の太陽を
たたき落そう
*
わたしは拾う 冬枯れた野に
枯れて乾いた 落穂をいくつか
わたしの拾った 落穂がいつか
穂麦となって 風にそよぐように
*
なぜ あんな狼を見逃したのか
なぜ あんな地獄を見過ごしたのか
おれたちは狼を神だと思い込んでいた
おれたちは狼を野放しにしていた
狼はまた牙をむき出して襲いかかる
そうして地獄がまたくりひろげられる
*
夢のなかで 詩を書いていた
眼が覚めたら 忘れてしまった
だが なんとうつくしかったろう
眼が覚めて 忘れさった詩は
*
見えない遠くを見るために ひとは夢みる
遠くへ呼びかけるために ひとは歌う
<『詩人会議』1996年4月号>
大島博光
ひとりの詩人がうたう
わたしがここへやってきたのは
人間のなかの人間をうたうためだ
ひとりの詩人がうたう
わたしは プロメテのように
火をくばって歩きたい
孤独が泣いている暗い部屋のなかに
若い恋びとたちの胸のなかに
ほのかな火をともして歩きたい
だが プロメテも 核のような
全人類を焼きつくすような
悪魔の火は盗まなかった
偽のプロメテの手から
偽の太陽を
たたき落そう
*
わたしは拾う 冬枯れた野に
枯れて乾いた 落穂をいくつか
わたしの拾った 落穂がいつか
穂麦となって 風にそよぐように
*
なぜ あんな狼を見逃したのか
なぜ あんな地獄を見過ごしたのか
おれたちは狼を神だと思い込んでいた
おれたちは狼を野放しにしていた
狼はまた牙をむき出して襲いかかる
そうして地獄がまたくりひろげられる
*
夢のなかで 詩を書いていた
眼が覚めたら 忘れてしまった
だが なんとうつくしかったろう
眼が覚めて 忘れさった詩は
*
見えない遠くを見るために ひとは夢みる
遠くへ呼びかけるために ひとは歌う
<『詩人会議』1996年4月号>
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