わが子 エミリーよ

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わが子 エミリーよ
               トー・フー

エミリイよ パパといっしょにおいで
大きくなったら おまえにもこの道がわかるよ
おまえはけっして忘れられないよ・・・
──どこへゆくの パパ
──ポトマックの河岸へ
──何を見にゆくの パパ
  ──娘よ ペンタゴンを見にゆくだけだよ
  おお ブロンドの髪をした娘よ
  眼のくりくりした娘よ
  さあ あんまりきかないで
  おまえを腕にだっこして出かけよう
  夕方 ママといっしょに帰るんだよ

夕ぐれのワシントンよ
市民たち 死んだ人たち 生きている人たちよ
炎をあげて燃えろ 「真実」に燃えあがれ
ジョンソンよ
おまえは 罪に罪を重ねている
全人類が おまえを憎んでいる
おまえは 黄金に目のくらんだ
手に負えぬ けだものだ
おまえは キリストの輝かしい言葉でつくろうことも
仏陀のサフラン色の衣で身をかくすこともできぬのだ
マクナマラよ
おまえはどこへ逃げこもうというのか
ペンタゴン――この歴史的な建物の中か
そこは五つの角をもったかくれ場
一つの角ごとに 一つの大陸
おまえは まっ赤に燃える炭火の中にもぐりこむのだ
燃える砂の中にもぐりこむ駝鳥のように

そこから よく見るがいい
いま この瞬間に見るがいい
私は たんなるこどもづれの父親ではない
私は きょうを照らす光なのだ
エミリイよ おまえは未来の光りだ
そして私はここにすわっている
かぞえきれぬ人たちのこころ
億万の人たちのこころ
アメリカのこころ
私はここにすわっているのだ
地平線を照らすまでに
ひとつのランプを
正義のランプを
赤々とともしかかげるために

おまえたち 悪魔の徒党!
いったい だれの名で なんのために
おまえたちは ホワイト・ハウスから
グアム島から
ベトナムの上に B52をとばして
ナパーム弾と毒ガスをまき散らすのか

それは病院と 学校を焼きはらうために
学校にかよう罪もないこどもたちを焼き殺すため
愛しあう人たちを みな殺しにするため
花咲く野や牧場を焼け野原に変えるため
歌と詩と風景をはこぶ河を破壊するため
──平和と自由を暗殺するためなのだ

いったい だれの名で なんのために
おまえたちは 若者を戦争に投げこむのか
人類の じっさいの幸福のために
何キロワットものエネルギーを出し
鋼鉄をきたえることもできる
あのたくましい美しい若者たちを

いったい だれの名で なんのために
私たちは行かなければならないのか
ジャングルのなかを
わなや 落とし穴のあいだを
「抗戦」の沼地を
動くとりでである道と村々を
大地と空とがぐらぐらゆれつづける
昼でも夜でも
おお 不思議な国 ベトナム
こどもたちが 英雄になる国
蜂雀さえたたかうすべを知っている国
花も 木の実も 武器となる国

死んでしまえ くたばってしまえ
おまえたち悪党ども
きいてくれ 私のアメリカよ
これは おまえのひとりの息子が
この世紀の ひとりの息子があげる
苦悩の叫び声だ 深い憎しみの叫び声なのだ

エミリイよ
まもなく夕ぐれになる・・・
私はもうおまえをつれて家に帰ることはできない
炎が燃えさかるころ
今夜 ママがおまえをさがしにくるよ
そうしたら 娘よ
腕をひらいて ママを迎え
私のかわりにママを抱いてあげなさい
そうして ママにいってあげなさい
パパは 幸福に死んでゆきました
ママ 悲しまないで と
夕ぐれのワシントンよ
市民よ
死んでる人たちよ生きてる人たちよ
いま 私の心は光りを放つ
もっとも純粋な明るさで
私の肉体は松明(たいまつ)となる
そこから 「真実」の
まばゆい炎が 吹きだし燃えあがってくれるように

<『ベトナム詩集』1967年>
(1965.11.2 ノーマン・モリソンは抗議の焼身自殺を遂げた)

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