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フランスの平和行進──オラドゥールについて

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 フランスの平和行進──オラドゥールについて
              大島博光

 さいきん、わたしは友人から、「フランスのオラドゥールを訪ねてきた」という絵葉書をもらいました。オラドゥールは、フランスの南西部リモージュに近い村で、日本のヒロシマとおなじような平和の聖地と言っていいところです。いま、ヒロシマにむけて「国民平和大行進」が日本中の路上をすすんでいますが、フランスでもオラドゥールなどをめぐる「平和行進」(キャラバン)が行なわれるようです。そうして、日本の旅行会社までも、オラドゥール詣でのツアーを組むようになったのです。
 第二次大戦の末期、一九四四年六月一〇日、敗走するナチス軍は、オラドゥール・シュル・グラーヌの村を焼きはらい、村民を虐殺し、女と子どもたちを教会に閉じこめて、これを焼きはらったのです。この恐るべきナチスの犯罪は、フランスのひとつの村を文字どおり地図のうえから抹消し、およそ五〇〇人の村民が犠牲になりました。おなじような虐殺が行なわれたところとしては、チェコのリデイツエ村、ベトナムのソンミなども忘れられないところです。そうしてオラドゥールは、廃墟のまま保存されて、ナチスの蛮行をいまに告発しているのです。
 詩人ジャン・タルディウはさっそく「オラドゥ−ル」という詩を書いて、オラドゥールの悲劇を訴えました。

 オラドゥールには もう女たちがいない
 オラドゥールには ひとりの男もいない
 オラドゥールには みどりの木がない
 オラドゥールには もう教会がない
 オラドゥールには もう子どもたちがいない
 世にも恐ろしい凌辱のゆえに
 村は ただひとつの叫びと化した
 人類の憎しみを告げる名まえよ
 人類の汚辱を告げる名まえよ
 その名は いつまでも呻めいている


     *
 一九四九年、詩人アラゴンは、オラドゥールをはじめ、ヴェルコール(ドローム県の山岳地帯にある村で、ドイツ軍によってパルチザン部隊が壊滅)、コルシカなど、レジスタンスの名所を訪ねて歩く「平和行進(キャラバン)」を組織し、みずからも参加して、詩集『わがキャラバン』を刊行します。「オラドゥールヘの平和行進の歌」にはこう歌われています。

 われらのキャラバンはすすむ
 あの血の痕ののこるところへ
 フランスの胸の傷ぐちは
 冷ややかな人らにも思い出させる
 「幼な子たちの虐殺」を

 平和行進をつづけるわれらは
 オラドゥールにとどけよう
 十字架の代わりに鳩を

(おおしま・はっこう フランス文学者・詩人)

<掲載誌不詳>
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