春になると

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春になると
                  大島博光

貝がら虫にたかられた庭のもちの木を
手入れにやってきてくれた植木屋が話してくれた
この町に わしほどのびんぼうにんはいない
だが わしらのこの胸のしんには何があるか
だれも知りはしない と
腹がけの胸をぶ厚い手のひらでたたきながら言う
大男の植木屋のおやじが話してくれた

春になると
いままでねむっていた木が水を吸いあげる
大きなけやきの幹などに
ききなれた耳をおしあててきくと
ずー ずー と 暗い幹のなかで
水を吸いあげる音がきこえるのだ
あの無数の葉で吸いあげるんだから
まるで つるべで汲みあげるように
一日に 一斗も二斗も吸いあげるのだ

それで 木の芽どきには
井戸の水が ひくくなるのだ

                    五三・三

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