わが祖国 祖国には多くの沼がある。そこにわたしは 多くの時代の不幸を読む……
そうしてむろんのこと ひとびとは英雄たちの思い出にもまして 名もない廃兵たちの思い出を守りつづけてきた。廃兵たちこそ 最後の叙事詩に歌われるべきであったし それが最後のものとなるようにと ひとびとは希った。そこから 人類の教訓が引きだされた。それを否定したい者は 否定するがいい。けれども わたしは否定するわけにはゆかない。なぜなら 人間は人間にとって狼だということは 悲惨なことだから。たとえ この深くもあるが平凡な真理が しばしばひとりの哲学者から戦争へと 新聞の論説からひとりの狂人のあわれな頭脳へと その姿を現わすとはいえ。そしてむろんのこと あのどこの村にもある 大理石の戦死者記念碑にきざまれた長い金文字の名簿から ひとびとはささやかな栄光を引きだすと同時に 逆の教訓をとりだすこともできる。だから ひとびとは 平和を口にするひとたちの言葉に よろこんで耳を傾けて 平和は限りなく尊いものだ それは真実だと言い そこからたちまち推論して言ったものだ──平和のためにひとが払うだろうものは値がつけられぬ それはよく考えてみるねうちがある なぜなら 光は貴重なものだが、しかしそのために自分の二つの眼を抉(えぐ)りとられてまで あがなわねばならぬものではないと。それゆえ この問題については議論がはてしなくつづいて よく磨かれた武器を愛し 選ばれた将軍たちの袖を金や銀で飾る指揮権のしるしを愛するあの連中の憤激を呼び起こした。しかも、彼ら自身疑いを抱いていた目的のために 国民に武器を要求したあの人たちが すべてのものが高貴な戦いに運命づけられているわけではないとしてかれらを擁護したことに だれが反対しただろうか。
わが祖国 わが祖国には多くの沼があり 昼と夜は 涙を血に変える……
これが祖国だったと ただ口さきで言ったり大声で否定したりしたひとびとのうちの誰が祖国を考えただろうか。冒涜や権謀術数によって 誰があの祖国と呼ばれる ずっしりと重い意識に近づくことができただろうか。突風が吹き起こってもろもろの思想を枯葉のように吹きとばし 硬(こわ)ばった仮面を剥ぎ ついに 長いあいだ隠されていた殉難者の素顔がそこに見出されるようなとき 誰が祖国の呼び声をききとるべきだったろうか。これが祖国だったと 彼らはポケットのなかの旅行証ぐらいにも信じただろうか。彼らには何よりも金銭が祖国だったのだ。彼らは祖国に背を向けて 税額や為替相場や 法律の変更や 利潤の法制化ばかりを追い求めたのだ。そして国境にひろがる暗雲を 彼らは犯罪者の陰惨なよろこびを浮べて見つめたのだ そこから儲けを引きだそうとして。彼らは あの教養は浅いが ある種の歌には感激する わが国の名も知れぬ貧しいひとびとには振り向きもせず いつも上流の異国人と意気投合し 彼らのように上等な肉を食べ粋な服装に気をくばり 旅行に出かけ どこの国の言葉も少しずつ知っていて 会話にでてくるどんな名前にも驚かない。そんな連中にとって いったいこれが祖国などでありえただろうか。
沼よ沼よ わが祖国のうえに かたちづくられ 降りてくる運命の重い歩みにも似た沼よ……
そしてかつて オウヴェルニュのひとりの若者の顔を染めていたあの希望の思い出を 誰がしっかりとまもってきただろうか。馬術に秀で 詩を愛し 幼時より父の死に会い しかもローマの鷲の旗のうえに不敵な眼差しを投げていたあの若者を。山々から深い湖水にまでとどろき 谷間から海へと 野を越えて鳴りひびいたあの勇士の思い出を 誰がいったいまもってきただろうか。また彼は 他の者たちが裏切ったわが国土と一体となって運命を共にし 身振りも見ごとに われわれ特有のあの快活さで シーザーの足もとに剣と楯を投げつけたということを いったい誰が知っているだろうか。彼がそのとき のちの子孫たちのため 自分が囚われるに値いするものを学びとり 後の世のため 森のなかに消えうせたキムリス族*lの偉大な夢と ケルトの吟遊詩人たちのささやきを 自分のあとに残したのを いったい誰が思いだすだろうか。それには ヴァプロウの辞書をめくり ビエーヴル侯爵*2の戯曲「ヴェルサンジェトリックス*3」を読んでいただきたい。(ビエーヴル侯爵 この名前を見られよ。)
わが祖国 わが祖国よ おんみの沼の底に 前兆にみちみちた歴史を おんみみずから読みとるがよい。さながら断末魔の荘厳な眼にも似たおんみの沼のなかに……
ケルトの森に消えうせたキムリス族の偉大な夢の あの往時の戦慄を 陰謀と脅迫のさなかで いったい誰がまもりつづけてきただろうか。あの森のなかから ケルトの吟遊詩人たちの歌声が湧きあがった 忘れさられた数世紀の 湧き立つような興奮を。わが大地のうえの空に鳴りどよもした高揚を。泉を魅了したが征服しなかった あの魔法のような数行の言葉の威力を。不屈の若者たち 永遠に不屈の若者たちを武勲へと駆りたてた偉大さへの陶酔を。そして その武勲といえば 王妃を救いだし 牢獄をうち破り 龍(ドラゴン)を絞め殺し 巨人をうち倒すといったたぐいのものであり あの不義不正にみちみちた密林から現れる騎士には不思議にも似合わぬことばかりであった。そして ここにわが祖国ははじまる。
わが祖国 わが祖国 わが祖国よ……
さてこれからは 思い出でも伝説でもなかった。苦難のどん底から ふたたび栄光が燦然(さんぜん)と立ち現われる 諸君の好きな呼び名でいえば あの太陽が あの酒が 立ち現われる。それは決しておとぎ話でもなければ まぼろしでもない。栄光は肉と血をもった人間より成り ひとびとのなかから立ち上がる。こうしてひとびとは 忘れていた巨人たちを眼のあたりに見た。民衆などというものは 職人や臆病者の集りでちっぽけで無力なものだと 諸君はいままで信じてきたし そう繰り返し口にするほど言いきかされてきた。だが いまや眼のまえに 忘れていた巨人たちが立ち現われたのだ。異国の歩哨が見張っている停車場のなかヘ リュックサックを背負い 鋲のついた頑丈な靴をはいた若者たちが はいって行く。また 痩せてはいるが 背の高いがっちりした骨組の若者たちが たれも開けることのできぬ小さな鞄をかかえて はいって行く。
人気ないさびしい街の街角で 男と女たちは出会つても 小声でさえ愛をささやかなかった。夜 怪しい血の痕(あと)が、光に鈍く照らされていた。ひとの住まぬ空家がふえ わが国は その秘密で 波のようにふくれあがった。
わが祖国……
それは まさに百鬼夜行であった。いつか誰かが その光景をわたしよりも
うまく語ってくれよう。それは百千の冒険の時代であった。危険を秘めないよ
うな影とては ひとつもなく むごたらしい場面を照らしださないような光とては
ひとつもなかった。もはや 流れは堰(せき)を信ずることができず 汽車はレールを 敵は明日を信ずることができなかった。いたるところから 大胆不敵なひとびとが立ちあがった。いつか ひとびとが イリアッドをさえせせら笑うほどの かず多くの武勇伝と胸の裂けるような悲壮とが いたるところに現われた。殉難や英雄主義のなかに突如として身を投げいれたひとびとのひとりとして 祖国の労働者たちのひとりとして おのれの運命をまえにしてたじろがなかった。一歩も後には退かなかった。平凡なフランス人がヘラクレスになった。ヘラクレスは 街に野にぞくぞくと現われた。屍の山を築くのに 誰ひとりためらわなかった。それにくらべれば あの一つ目の巨人のキュクロペスも小さく見えただろう。わが国の砂を染めた血の痕を見たら オッサの山にペリオンの山を積み重ねた巨人たちも 顔色を変えたにちがいない……
わが租国……
そのとき われわれは われわれの流儀で声をひそめて歌った。そっとつぶやかれた繰返しが 口から口へつたわってゆく。とある街の歩道で道ゆくひとが口笛で吹きならす妙に心に沁みる歌をきくと ひとは知らず知らず 行きちがったほかの男にその歌を伝え その男はそれをまた遠くへ運んでゆく。歌は口から口へ伝えられるうち 変えられ つけ加えられて 大きくふくれあがった。民衆はなんという無限のこだまを秘めていることだろう なんという神秘を! われわれの歌は ほとんど歌うともなく唇にのぼつてきた。わが国は断崖にうち寄せる海のように 港のまえで揺れる船のように ひくく深くどよもした。わが国は 世界の歌そのものとなり あらゆる希望と絶望とを要約する音楽となった。しかも自然と人間そのものを克服しようとする人間の意志でふくれあがっていた。わが国は深い夜のなかを 光の射しはじめる方へと辿り 夜明けを予感し 夜明けは闘いであり 血と涙こそが 夜明けの蒼白い光を輝かせるのだということを知っていた。わが祖国は歌ごえをあげて光に近づきつつあった…… そのときだ フランスの起床ラッパが鳴りひびいたのは。
*1(訳注)ケルト語を用いた往時の一種族。
*2(訳注)ビエーヴル侯爵(一七四七-一八二五)──パリに生る。文学者。その駄洒落によって有名。
*3(訳注)西紀前七二年頃、アルヴェルヌ (こんにちのオウヴェルニュ)に生れたゴオルの将軍。雄弁家にして勇敢な彼は、五十二歳のとき、シーザーに対抗するためゴオル諸民族の同盟をつくり、その盟主となった。ジエゴォヴィの防衛に成功したが、彼はシーザーに捕えられ、アレスタに閉じこめられた。ゴオルの軍隊が彼の救出に赴いたが失敗し、彼はローマに連れ去られ、六年間の幽閉ののち死刑になる。
<アラゴン「フランスの起床ラッパ」─イントロダクション>
そうしてむろんのこと ひとびとは英雄たちの思い出にもまして 名もない廃兵たちの思い出を守りつづけてきた。廃兵たちこそ 最後の叙事詩に歌われるべきであったし それが最後のものとなるようにと ひとびとは希った。そこから 人類の教訓が引きだされた。それを否定したい者は 否定するがいい。けれども わたしは否定するわけにはゆかない。なぜなら 人間は人間にとって狼だということは 悲惨なことだから。たとえ この深くもあるが平凡な真理が しばしばひとりの哲学者から戦争へと 新聞の論説からひとりの狂人のあわれな頭脳へと その姿を現わすとはいえ。そしてむろんのこと あのどこの村にもある 大理石の戦死者記念碑にきざまれた長い金文字の名簿から ひとびとはささやかな栄光を引きだすと同時に 逆の教訓をとりだすこともできる。だから ひとびとは 平和を口にするひとたちの言葉に よろこんで耳を傾けて 平和は限りなく尊いものだ それは真実だと言い そこからたちまち推論して言ったものだ──平和のためにひとが払うだろうものは値がつけられぬ それはよく考えてみるねうちがある なぜなら 光は貴重なものだが、しかしそのために自分の二つの眼を抉(えぐ)りとられてまで あがなわねばならぬものではないと。それゆえ この問題については議論がはてしなくつづいて よく磨かれた武器を愛し 選ばれた将軍たちの袖を金や銀で飾る指揮権のしるしを愛するあの連中の憤激を呼び起こした。しかも、彼ら自身疑いを抱いていた目的のために 国民に武器を要求したあの人たちが すべてのものが高貴な戦いに運命づけられているわけではないとしてかれらを擁護したことに だれが反対しただろうか。
わが祖国 わが祖国には多くの沼があり 昼と夜は 涙を血に変える……
これが祖国だったと ただ口さきで言ったり大声で否定したりしたひとびとのうちの誰が祖国を考えただろうか。冒涜や権謀術数によって 誰があの祖国と呼ばれる ずっしりと重い意識に近づくことができただろうか。突風が吹き起こってもろもろの思想を枯葉のように吹きとばし 硬(こわ)ばった仮面を剥ぎ ついに 長いあいだ隠されていた殉難者の素顔がそこに見出されるようなとき 誰が祖国の呼び声をききとるべきだったろうか。これが祖国だったと 彼らはポケットのなかの旅行証ぐらいにも信じただろうか。彼らには何よりも金銭が祖国だったのだ。彼らは祖国に背を向けて 税額や為替相場や 法律の変更や 利潤の法制化ばかりを追い求めたのだ。そして国境にひろがる暗雲を 彼らは犯罪者の陰惨なよろこびを浮べて見つめたのだ そこから儲けを引きだそうとして。彼らは あの教養は浅いが ある種の歌には感激する わが国の名も知れぬ貧しいひとびとには振り向きもせず いつも上流の異国人と意気投合し 彼らのように上等な肉を食べ粋な服装に気をくばり 旅行に出かけ どこの国の言葉も少しずつ知っていて 会話にでてくるどんな名前にも驚かない。そんな連中にとって いったいこれが祖国などでありえただろうか。
沼よ沼よ わが祖国のうえに かたちづくられ 降りてくる運命の重い歩みにも似た沼よ……
そしてかつて オウヴェルニュのひとりの若者の顔を染めていたあの希望の思い出を 誰がしっかりとまもってきただろうか。馬術に秀で 詩を愛し 幼時より父の死に会い しかもローマの鷲の旗のうえに不敵な眼差しを投げていたあの若者を。山々から深い湖水にまでとどろき 谷間から海へと 野を越えて鳴りひびいたあの勇士の思い出を 誰がいったいまもってきただろうか。また彼は 他の者たちが裏切ったわが国土と一体となって運命を共にし 身振りも見ごとに われわれ特有のあの快活さで シーザーの足もとに剣と楯を投げつけたということを いったい誰が知っているだろうか。彼がそのとき のちの子孫たちのため 自分が囚われるに値いするものを学びとり 後の世のため 森のなかに消えうせたキムリス族*lの偉大な夢と ケルトの吟遊詩人たちのささやきを 自分のあとに残したのを いったい誰が思いだすだろうか。それには ヴァプロウの辞書をめくり ビエーヴル侯爵*2の戯曲「ヴェルサンジェトリックス*3」を読んでいただきたい。(ビエーヴル侯爵 この名前を見られよ。)
わが祖国 わが祖国よ おんみの沼の底に 前兆にみちみちた歴史を おんみみずから読みとるがよい。さながら断末魔の荘厳な眼にも似たおんみの沼のなかに……
ケルトの森に消えうせたキムリス族の偉大な夢の あの往時の戦慄を 陰謀と脅迫のさなかで いったい誰がまもりつづけてきただろうか。あの森のなかから ケルトの吟遊詩人たちの歌声が湧きあがった 忘れさられた数世紀の 湧き立つような興奮を。わが大地のうえの空に鳴りどよもした高揚を。泉を魅了したが征服しなかった あの魔法のような数行の言葉の威力を。不屈の若者たち 永遠に不屈の若者たちを武勲へと駆りたてた偉大さへの陶酔を。そして その武勲といえば 王妃を救いだし 牢獄をうち破り 龍(ドラゴン)を絞め殺し 巨人をうち倒すといったたぐいのものであり あの不義不正にみちみちた密林から現れる騎士には不思議にも似合わぬことばかりであった。そして ここにわが祖国ははじまる。
わが祖国 わが祖国 わが祖国よ……
さてこれからは 思い出でも伝説でもなかった。苦難のどん底から ふたたび栄光が燦然(さんぜん)と立ち現われる 諸君の好きな呼び名でいえば あの太陽が あの酒が 立ち現われる。それは決しておとぎ話でもなければ まぼろしでもない。栄光は肉と血をもった人間より成り ひとびとのなかから立ち上がる。こうしてひとびとは 忘れていた巨人たちを眼のあたりに見た。民衆などというものは 職人や臆病者の集りでちっぽけで無力なものだと 諸君はいままで信じてきたし そう繰り返し口にするほど言いきかされてきた。だが いまや眼のまえに 忘れていた巨人たちが立ち現われたのだ。異国の歩哨が見張っている停車場のなかヘ リュックサックを背負い 鋲のついた頑丈な靴をはいた若者たちが はいって行く。また 痩せてはいるが 背の高いがっちりした骨組の若者たちが たれも開けることのできぬ小さな鞄をかかえて はいって行く。
人気ないさびしい街の街角で 男と女たちは出会つても 小声でさえ愛をささやかなかった。夜 怪しい血の痕(あと)が、光に鈍く照らされていた。ひとの住まぬ空家がふえ わが国は その秘密で 波のようにふくれあがった。
わが祖国……
それは まさに百鬼夜行であった。いつか誰かが その光景をわたしよりも
うまく語ってくれよう。それは百千の冒険の時代であった。危険を秘めないよ
うな影とては ひとつもなく むごたらしい場面を照らしださないような光とては
ひとつもなかった。もはや 流れは堰(せき)を信ずることができず 汽車はレールを 敵は明日を信ずることができなかった。いたるところから 大胆不敵なひとびとが立ちあがった。いつか ひとびとが イリアッドをさえせせら笑うほどの かず多くの武勇伝と胸の裂けるような悲壮とが いたるところに現われた。殉難や英雄主義のなかに突如として身を投げいれたひとびとのひとりとして 祖国の労働者たちのひとりとして おのれの運命をまえにしてたじろがなかった。一歩も後には退かなかった。平凡なフランス人がヘラクレスになった。ヘラクレスは 街に野にぞくぞくと現われた。屍の山を築くのに 誰ひとりためらわなかった。それにくらべれば あの一つ目の巨人のキュクロペスも小さく見えただろう。わが国の砂を染めた血の痕を見たら オッサの山にペリオンの山を積み重ねた巨人たちも 顔色を変えたにちがいない……
わが租国……
そのとき われわれは われわれの流儀で声をひそめて歌った。そっとつぶやかれた繰返しが 口から口へつたわってゆく。とある街の歩道で道ゆくひとが口笛で吹きならす妙に心に沁みる歌をきくと ひとは知らず知らず 行きちがったほかの男にその歌を伝え その男はそれをまた遠くへ運んでゆく。歌は口から口へ伝えられるうち 変えられ つけ加えられて 大きくふくれあがった。民衆はなんという無限のこだまを秘めていることだろう なんという神秘を! われわれの歌は ほとんど歌うともなく唇にのぼつてきた。わが国は断崖にうち寄せる海のように 港のまえで揺れる船のように ひくく深くどよもした。わが国は 世界の歌そのものとなり あらゆる希望と絶望とを要約する音楽となった。しかも自然と人間そのものを克服しようとする人間の意志でふくれあがっていた。わが国は深い夜のなかを 光の射しはじめる方へと辿り 夜明けを予感し 夜明けは闘いであり 血と涙こそが 夜明けの蒼白い光を輝かせるのだということを知っていた。わが祖国は歌ごえをあげて光に近づきつつあった…… そのときだ フランスの起床ラッパが鳴りひびいたのは。
*1(訳注)ケルト語を用いた往時の一種族。
*2(訳注)ビエーヴル侯爵(一七四七-一八二五)──パリに生る。文学者。その駄洒落によって有名。
*3(訳注)西紀前七二年頃、アルヴェルヌ (こんにちのオウヴェルニュ)に生れたゴオルの将軍。雄弁家にして勇敢な彼は、五十二歳のとき、シーザーに対抗するためゴオル諸民族の同盟をつくり、その盟主となった。ジエゴォヴィの防衛に成功したが、彼はシーザーに捕えられ、アレスタに閉じこめられた。ゴオルの軍隊が彼の救出に赴いたが失敗し、彼はローマに連れ去られ、六年間の幽閉ののち死刑になる。
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