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アラゴン「すべての女たちのなかのひとりの女を」

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 すべての女たちのなかのひとりの女を

太鼓の音に誘われて現れる 腕の白い召使いたち
場末の戸口に立って笑いさざめく針女(おはりこ)たち

歌いながら行く娘たち 行きずりの名もない女たち
きみたちはオペラだ 大砲の音を消してしまう

あるものは月の光り あるものは雪の匂い
彼女たちのやりくりでひろい世界が廻る

裸足の王たちが 安息日の祭りを見まもる
あの黄金色の国から ベレニスはやってきた

誤って相争う フランスの空の下に眠る
生(き)のままの色をしたマリヤの なんと美しいこと          
髪の毛も明るいアストリッド*1よ アニエトース・ド・メラニー*2よ
おお 太陽よりも輝かしい二十歳(はたち)の女王たち

塔のうえで 念入りのおめかしで恋人を待っている
きれ長の眼をした奥方たち

すべての女たちが 胸ふるわせる甘いこだまをみつけ
愛は鳴りひびき 忘れた歌がもどってくるだろう

たとえ どんな悲惨のどん底にあろうと
荒涼と眼には何も映らず みんなの心が黙りこもうと

声のかすれるまで、せめてわたしは歌おう
ひとがアエリスを語るとき わたしはエルザを歌おう

*1 アストリッド(1905-1935)──当時、ナチスに侵略されたベルギー王レオポルド三世の妃。
*2 チロルのメラニー公爵の娘。一一九六年、フィリップ・アウガストの三番目の妃となる。

(『フランスの起床ラッパ』)

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