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さよなら

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さよなら
                大島博光

わたしは九〇歳 ねたきり雀
最後のさよならを言ってもいいだろう

わたしはわがままで 愛に欠けて
他者(ひと)には何ひとつ 差し出せなかった

そればかりか たくさんのひとたちを
痛め傷つけてきたのではないか

なのに たくさんのひとたちの愛のおかげで
わたしは生きてくることができた

わたしの反抗の詩は売れなかった
そういうものしかわたしには書けなかった

もしも そのひとたちの愛がなかったら
わたしを生きさせてくれなかったら

生きるに不器用なわたしは飢えはてて
公園のベンチでのたれ死んでいたろう

ぶどうの添木のように わたしを支えて
生きさせてくれたひとたちに礼を言おう

その愛を抱いてわたしは遠く旅立とう
そして最後のさよならをのべよう

人間の愛をわたしは信じることができる
もしも信じないなら わたしは人でなしであろう

               〇〇・七・一〇

<自筆原稿>
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