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うごめく亡霊

ここでは、「うごめく亡霊」 に関する記事を紹介しています。
うごめく亡霊
                大島博光

四十一年前に 死んだはずの亡霊が
血まみれの ぼろぼろの軍服を着こんで
大臣の椅子に ふんぞりかえって
言いたい放題 放言 暴言 妄言を
機関銃のように 吐き散らす

あの軍国主義「教科書」はよいものだ
悪名高い 文部官僚の検定をパスしたが
あれは 修正しなくともよいものだ
あれは 柔かい少年たちの脳味噌に
荒唐無稽な神話を吹きこむ よいものだ

──十五年戦争 いや大東亜戦争は
列強からアジアを解放する聖戦だった
それを 中国やアジアの諸国は
日本帝国主義の 侵略戦争だったと
ブーブー 批判 非難しておる

「それは内政干渉だ おせっかいだ
文句を言ってるやつは 世界史で
そういうことをしなかったというのか」
「日韓併合も侵略ではなくて 合意で
韓国の側にも 責任がある・・・」

「『南京虐殺』は二十万三十万というが
真相は いまだに分っていない
それに 殺した数で云々するのは
論理的にも 妥当性がない・・・」
「東京裁判は一種の暗黒裁判なのだ」

「靖国」に公式参拝しないで
だれが 国のために死ねるか──
──だが 星条旗の核の傘に縛られて
いったい どんな国を守れというのか
いったい だれのために死ねというのか

舌打ちする 影の声がきこえてくる
そんなにずけずけと 本音を吐くな
この 親の心子知らずのばかものめが
ねたふり死んだふりして 本音を隠し
羊は だまくらかして料理するものだ

聞くほどに これはこれ 野獣の論理
盗っ人 猛だけしいとは このことだ
アジア人民を 血祭りにあげたことを
みんなが忘れたとでも思っているのか
あんなことを ぬけぬけとほざくのは

そうだ アジア諸国民の怨嗟の声は
この野獣の耳には きこえぬのだ
白木の箱に入れられた兵士の坤きも
母親のすすり泣きも「わだつみの声」も
この鉄の耳には とどかぬのだ

狂ったように 本音を吐いた亡霊は
大臣の椅子から おっぽり出された
風に揺れて騒いだ 小枝を切っても
根っこはひとつ ファッショの木
うごめく亡霊は ひとりではない

うそとペてんで かすめとった三〇四
その数をカサに ごり押ししようと
日本人民とアジア人民は もう二度と
血まみれの亡霊を 通さぬだろう
歴史から学ばぬものに 未来はない

<『赤旗』日曜版1986年9月>

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