信州での出合い
■ワシは戦後間もなく、昭和二十三年頃ですか、大島博光氏が疎開して長野にいると聞いて訪ねて行きました。その頃は労働組合の機関誌が勢いがあって、いいものが出ていて、ワシはそこの文化部にいてね。大島先生も日本共産党に入党されて間もない頃だったと思います。何にも手のつかないような大島先生が党の講演会を聴いて感動して、昭和二十一年二月の「ある雪の降る日」に「その場で入党した」と書かれています。
■大島先生が住んでいたのは長野の桐原駅のスグ裏で、結婚したばかりの奥さんと一歳半ぐらいの子供と三人で暮らしていた。
初めて訪ねていった時は、奥さんは上田の鐘紡の争議の応援に出かけていて、博光氏が一人で子供をみていました。
■昭和十九年から昭和二十五年くらいまで、大島先生は信州で暮らした。結婚して生家のある西寺尾でしばらく暮らし、それから桐原へ移った。
大島先生の三十四歳から四十歳までの五年間ですが、ワシの感じではもっと年をしていた感じでしたね。その当時から杖もっていた。杖を突いていましたよ。胸が悪かったですから。
夜の『歌声』
■ワシは大島先生に見てもらおうと詩を書いて持って行ったんだ。その詩のフレーズに「夜の太陽」と書いたのを読んで、博光氏はジロッとワシの顔を見て「これは君のコトバか?」と問いただした。私は「ハ、ハイ」と答えたが、心の中では驚き恐ろしくなってしまった。
実は「夜の太陽」というのは、善光寺前の藤屋旅館のウィンドウに一枚の絵が飾られていて「夜の太陽」という題がついていたのを見て、それを拝借したものだった。
それから私は大島先生に心酔するようになったんです。
■大島先生は党に入って、間もなく『歌声』という詩誌を出すんですが、それから少し元気になった。しかし元気になっても金は一銭もなかった。奥さんの静江さんはイモも食えなくて苦労したんですよ。
実家から金を出してもらって三鷹に家を造ってもらって、東京に出て、やっと息ができるようになったんじゃないか。大島先生の出していた『歌声』にはワシも投稿しました。名の知れた詩人が『歌声』に詩を発表していましたよ。
(『狼煙』58号 小熊忠二「よみがえる詩人 大島博光」より)
■ワシは戦後間もなく、昭和二十三年頃ですか、大島博光氏が疎開して長野にいると聞いて訪ねて行きました。その頃は労働組合の機関誌が勢いがあって、いいものが出ていて、ワシはそこの文化部にいてね。大島先生も日本共産党に入党されて間もない頃だったと思います。何にも手のつかないような大島先生が党の講演会を聴いて感動して、昭和二十一年二月の「ある雪の降る日」に「その場で入党した」と書かれています。
■大島先生が住んでいたのは長野の桐原駅のスグ裏で、結婚したばかりの奥さんと一歳半ぐらいの子供と三人で暮らしていた。
初めて訪ねていった時は、奥さんは上田の鐘紡の争議の応援に出かけていて、博光氏が一人で子供をみていました。
■昭和十九年から昭和二十五年くらいまで、大島先生は信州で暮らした。結婚して生家のある西寺尾でしばらく暮らし、それから桐原へ移った。
大島先生の三十四歳から四十歳までの五年間ですが、ワシの感じではもっと年をしていた感じでしたね。その当時から杖もっていた。杖を突いていましたよ。胸が悪かったですから。
夜の『歌声』
■ワシは大島先生に見てもらおうと詩を書いて持って行ったんだ。その詩のフレーズに「夜の太陽」と書いたのを読んで、博光氏はジロッとワシの顔を見て「これは君のコトバか?」と問いただした。私は「ハ、ハイ」と答えたが、心の中では驚き恐ろしくなってしまった。
実は「夜の太陽」というのは、善光寺前の藤屋旅館のウィンドウに一枚の絵が飾られていて「夜の太陽」という題がついていたのを見て、それを拝借したものだった。
それから私は大島先生に心酔するようになったんです。
■大島先生は党に入って、間もなく『歌声』という詩誌を出すんですが、それから少し元気になった。しかし元気になっても金は一銭もなかった。奥さんの静江さんはイモも食えなくて苦労したんですよ。
実家から金を出してもらって三鷹に家を造ってもらって、東京に出て、やっと息ができるようになったんじゃないか。大島先生の出していた『歌声』にはワシも投稿しました。名の知れた詩人が『歌声』に詩を発表していましたよ。
(『狼煙』58号 小熊忠二「よみがえる詩人 大島博光」より)
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