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アストゥリアス 「インディオがメキシコから降りてくる」

ここでは、「アストゥリアス 「インディオがメキシコから降りてくる」」 に関する記事を紹介しています。
インディオがメキシコから降りてくる
                      ミゲル・アンヘル・アストゥリアス/訳 大島博光

インディオが メキシコから降りてくる
青い夜の重荷を 背なかにせおって
町はあそこだ 町はかれらを迎える
街通りは 一匹の兎で 大騒ぎ
夜が明けそめると 街通りの
ともしびはみんな 星のように消える
かれらの手は 二つの櫓のように
風のなかを 漕いでゆく
高鳴る 心臓の音が のこる
そうして かれらの通ったあとに
小さな足跡が こぼれ落ちて残る
はてしない道の ほこりのなかに

メキシコにあらわれる 星たちは
メキシコにのこる なぜならば
インディオたちが それをつかまえ
それを籠に編んで そのなかに
黄金いろのユカの枝で 摘んだ
白い花房や にわとりを入れる
インディオたちは おれたちよりも
音もたてずに ひっそり生きる
かれらがメキシコから降りてくるとき
きこえるのは 熱い息使いばかり
ときにそれは 銀いろのまむしのような
かれらのくちびるの上で 口笛となる
    (『ひばりのこめかみ』一九二九~一九三二年)

去年、ネルーダの死に際して、追悼詩『生けるネルーダ』をかいた詩人作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアスが、さる六月九日、マドリードで七五歳の生涯をとじた。ここに作品を紹介しわれわれの追悼の意をあらわしたい。

<「詩人会議」ミゲル・アンヘル・アストゥリアスの詩(上) 訳・解説 大島博光 /1974年>
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