メニルモンタンの坂の街で
大島博光
わたしはいま 石畳のメニルモンタンの
カフェ・テラスに坐っている
カフェは 坂になった広い袋小路の
まんなかに立っていて
そこからセーヌの方へ だらだら坂の
街通りが下っている
下の街は 夏の光と騒音のなかに煙っている
わたしはいま ペール・ラシェーズ墓地の
「コミューヌの壁」を訪れてきたばかりだ
壁には 百年むかしの銃弾の痕が
生まなましく黒い穴を残していた
最後の一五三人のコミューヌ戦士が
この壁の前で銃殺されたのだった
壁の前の芝生には 白いデージーが咲いていた
小さな星をまき散らしたように
坂の下の街通りには
コミューヌ最後のバリケードが
崩れ落ちていた
そこからひそかに姿を消した
ひとりのコミューヌ戦士もいた
燃えるパリの残り火に
血と泥が輝いていた
坂の下の街通りからおしよせてくる
ヴェルサイユ軍のときの声が
わたしの耳にきこえてくる
わたしは歴史のなかに坐っていた

大島博光
わたしはいま 石畳のメニルモンタンの
カフェ・テラスに坐っている
カフェは 坂になった広い袋小路の
まんなかに立っていて
そこからセーヌの方へ だらだら坂の
街通りが下っている
下の街は 夏の光と騒音のなかに煙っている
わたしはいま ペール・ラシェーズ墓地の
「コミューヌの壁」を訪れてきたばかりだ
壁には 百年むかしの銃弾の痕が
生まなましく黒い穴を残していた
最後の一五三人のコミューヌ戦士が
この壁の前で銃殺されたのだった
壁の前の芝生には 白いデージーが咲いていた
小さな星をまき散らしたように
坂の下の街通りには
コミューヌ最後のバリケードが
崩れ落ちていた
そこからひそかに姿を消した
ひとりのコミューヌ戦士もいた
燃えるパリの残り火に
血と泥が輝いていた
坂の下の街通りからおしよせてくる
ヴェルサイユ軍のときの声が
わたしの耳にきこえてくる
わたしは歴史のなかに坐っていた

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