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ピカソ讃歌「ムージャンの魔法使いのバラード」

ここでは、「ピカソ讃歌「ムージャンの魔法使いのバラード」」 に関する記事を紹介しています。
ムージャンの魔法使いのバラード
                         ミッシェル・ビュトール/大島博光訳

わたしは手につかんだ 絵画を紙を木炭をひもを釘を
わたしはそれに混ぜ合わせた 木片をトタン板を粘土を糊を
わたしはそれを焼いた セメントと土と柳の枝と木の葉と漆喰いといっしょに
そうやってわたしは作った 酒壷をグラスを壜を椅子をギターを
馬を雄牛を雄鶏を山羊をふくろうを
空を海を木を髪の毛を顔を女たちを
いつも探しまわらずに発見しようと努めながらそしていつも発見しながら
わたしはねじ曲げた 酒壷を壜をギターを雄牛を山羊たちを
わたしはそれらを圧縮した 空で木で顔で新聞で本で
わたしはそれらを浸した 美術館に音楽に歴史にサーカスに石油ランプに
そしてそこから掘り出した 血を旅を灰を窓を戦争を
角を反乱を恐怖の沈黙を顎を道具を
つぶやきを涙を苦しみを屍を腐敗を夢を
いつも町々の乱闘のなかに迷いこんで いつも引っかきながら                                       
わたしは吸いこんだ 血を灰を戦争を反乱を恐慌(パニック)を
わたしはそれらを吐き出した つぶやきをとおし苦しみをとおし腐敗をとおし夢をとおし
科学に照らした嘘をとおして
わたしはそこに放ったらかしにした 剣闘士をミノトールをアルルカンを画家たちを
そして彼らを孤立させた 可能な出口から失われた優しさから発見から笑いから
叫びから歌から呼吸から眠りから眼覚めから幸運から
雷鳴から噴出から発酵から芽生えから開花から星たちから
いつも世界の不幸のなかから掘りさげながら そしてそれを拒否しながら
かずかずの仮面の王たるわたしは身に着けた乱暴無礼を冷笑を悪ふざけを何ものにもめげぬ孤独を
そしてそこから作りあげた 少年時代のくちづけを生きのびるアルコールを群衆の慰めを
わたしはそこから腹と眼を解放した その排他的な美を問うた
いつもこの問いから生まれ いつも生まれながら死に

* ミッシェル・ビュトールはアラゴンの後の若い世代に属す詩人。

<新日本新書「ピカソ」─ピカソの死>

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