讃歌のなかの讃歌
ルイ・アラゴン/大島博光訳
わたしは きみの腕のなかで 半生を過した
*
この世の始めに 神はアダムの口に
すべての物を名ざす言葉を与えた
アダムの舌の上で きみの名はじっとわたしを待っていた
薔薇の咲き出るのを待っている冬のように
*
わたしは 丘のうえへやってきて
一羽の鶉を捕えた男にそっくりだ
その幸運をどうしていいやら 男には分らぬのだ
おお なんと羽根のやわらかいことか
しかも 胸のどきどきするこの恐さ
*
わたしの唇が呻めいていた時 きみの花環のような腕は
わたしの魂のまわりを アネモネのお花畑にしてくれた
*
きみは静かに テラスからテラスへと
降りてくる 月の足どりで わたしの夜の中へ
*
わたしには 海の話はするな
きみを生涯うたいつづけてきた
わたしには
わたしには きみの母の話はするな
きみを生涯抱きかかえてきた
わたしには
*
わたしの手のひらは きみの肩の匂いを大事に秘めてきた
*
きみの顔は わたしの人生の星空だ
*
きみはわたしのなかを歩いてゆく 深い音楽よ
遠のいてゆくきみの足どりの香りが聞こえてくる
ルイ・アラゴン/大島博光訳
わたしは きみの腕のなかで 半生を過した
*
この世の始めに 神はアダムの口に
すべての物を名ざす言葉を与えた
アダムの舌の上で きみの名はじっとわたしを待っていた
薔薇の咲き出るのを待っている冬のように
*
わたしは 丘のうえへやってきて
一羽の鶉を捕えた男にそっくりだ
その幸運をどうしていいやら 男には分らぬのだ
おお なんと羽根のやわらかいことか
しかも 胸のどきどきするこの恐さ
*
わたしの唇が呻めいていた時 きみの花環のような腕は
わたしの魂のまわりを アネモネのお花畑にしてくれた
*
きみは静かに テラスからテラスへと
降りてくる 月の足どりで わたしの夜の中へ
*
わたしには 海の話はするな
きみを生涯うたいつづけてきた
わたしには
わたしには きみの母の話はするな
きみを生涯抱きかかえてきた
わたしには
*
わたしの手のひらは きみの肩の匂いを大事に秘めてきた
*
きみの顔は わたしの人生の星空だ
*
きみはわたしのなかを歩いてゆく 深い音楽よ
遠のいてゆくきみの足どりの香りが聞こえてくる
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