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パリの雨  八月二十六日



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パリの雨  八月二十六日



パリの褐色の屋根に初秋の雨が降る
積み重ねた石の見えるむき出しの灰色の壁に雨が降る

ヴェルレーヌの心に降った
雨が降る

煙突のひさしのかげに 雀が二羽 雨宿りしている
ひとりパリに病んで

わたしはそれらを眺めている

向うの屋根裏部屋の窓べに立って

やはり雨を眺めている赤シャツの男がいる

日本では 秋の長雨が始まる頃だ
そうして台風がやってくる頃だ 


わたしのこころには しとしとと泌みるように降る
ひとり遠いパリに来て はじめて
旅愁という言葉が身にしみる

旅愁とは こんなに生の切なさに
みちたものとは 知らなかった

パリノート

<ノート 「1980 パリ」>

*ヨーロッパ詩集の「パリの雨」の草稿にあたります。

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