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ヒロシマ・ナガサキから吹く風は

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ヒロシマ・ナガサキから吹く風は

   ──ヒロシマ・ナガサキ・アピールに寄せて       大島博光

きょう ヒロシマ・ナガサキから吹く風は
四十年後のいまも 怒り 呻き おらぶ
ヒロシマ・ナガサキに 涙はかわかない
四十年たったいまも その傷は癒えない

ヒロシマ・ナガサキは 巨大な窯(かま)になった
アウシュヴィッツのガスがまのように
大量虐殺(ホロコースト)が そこで おこなわれたのだ
原子の火で放射能で 八〇〇〇度の熱線で

一瞬に 過去 現在 未来が吹っ飛んだ
生きながら 焼き焦がされた 子供たち
生きながら 襤褸の身となった 女たち
生きながら 蛆虫に喰われた 男たち

きょう ヒロシマ・ナガサキから吹く風は
虫けらのように 焼き殺された人たちの
その 燃えた血と涙のうえを渡ってくる
その 燃えた灰と骨のうえを吹いてくる

ヒロシマ・ナガサキの あの焦熱地獄から
いまこそ 二〇世紀の黙示禄を読み取ろう
ダンテも こんな地獄をくぐらなかった
プロメテもこんな地獄の火を盗まなかった

ヒロシマ・ナガサキに死者たちは眠れない
灼かれた眼の痛みで 眠ろうにも眠れない
ききとろう 死者たちの呻きおめきから
生の重さを 生きる日の悦びの果てなさを

そうして涙と怒りを たたかいに変えよう
そのとてつもない死神を地球から追い出そう
かってストックホルムの風に翔んだ六億の
あの鳩たちは 核にかかった手を押さえつけた

ある詩人たちは言う 詩にスローガンを
書きこむとき それは詩でなくなるのだと
ヒロシマ・ナガサキの 風に吹かれて
わたしは いつとはなしにこれを書いた

これが詩でなくたってわたしはかまわない
ヒロシマ・ナガサキから吹く風は告げる
人類の生そのものが問われているときこそ
「詩は実践的な真理を目的とすべきだ」と

ヒロシマ・ナガサキの 熱い灰の中から
その名も希望とよぶ 不死鳥が 舞い立つ
大きな死とたたかう 鳩たちが飛び立つ
ヒロシマ・ナガサキから 世界じゅうの空へ

 (『しんぶん赤旗』1985年8月7日、『冬の歌』1991年)


ヒロシマ・ナガサキ
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