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アポリネール 「そのむかし ボヘミヤに」

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そのむかし ボヘミヤに
                        アポリネール/大島博光訳

そのむかし ボヘミヤに ひとりの詩人がいたそうな
ひとを恋うて泣き 太陽にむかって歌っていた
そのむかし 雲雀(アルーエット)伯爵夫人がいたそうな
たいへん瞞(だま)すのがうまかったので 詩人はのぼせて
自分の歌を忘れてしまい 夜も眠れなかった

ある日 彼女は言った「愛しているわ わたしの詩人よ」
だが 彼は彼女を信じずに 悲しげに微笑んだ
「囀(さえず)れ 雲雀よ」と彼は歌いながら出て行き
美しい 小さな森の奥に 身をかくした

ある晩 すてきな声で 囀(さえず)りながら
雲雀伯爵夫人が 森にやってきた
「おお わたしの詩人よ 愛しているわ そう言ったでしょ
永遠に愛しているわ とうとうあなたを見つけたわ!
さあ 恋いこがれる わたしの魂をいつまでも抱いて」

おお 禿鷹の無常な心をもった 残酷な雲雀よ
またしてもあなたは 信じやすい詩人を騙した
夕ぐれ すすり泣く 森の声がわたしにきこえる
伯爵夫人は出かけて行って ある日 もどってきた
「詩人さん わたしを愛して わたしはほかの人を 愛しているの」

そのむかし ボヘミヤに ひとりの詩人がいた
なぜか知らぬが かれは戦争に行った
愛されたいと思っても ひとを愛さぬがいい わたしを信じ給え
「伯爵夫人 愛しているよ」そう言いながら 彼は死んだ
そうして とても寒い明け方 恋の消え去るように
砲弾のとび去る音が わたしに聞こえた

愛の詩集
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