千曲川

大島博光記念館へようこそ。
長野詩人会議が中心となって建設運動をすすめ、2008年7月にオープンしました。
愛と抵抗を歌った博光の詩の世界にふれていただけます。


 第六の歌 そのときわたしは大地の梯子を

そのときわたしは大地の梯子をよじ登ってきた
消えうせた森の肌を刺す薮のなかを

おまえのところまで マチュ・ピチュよ

石の階段から成る山の高みの都市よ
ついに大地が眠りの衣の下に
隠さなかったものの住居よ
おまえのなかには 二本の平行線のように
稲妻の揺りかごと人間の揺りかごが
棘のような風のなかに揺れていた

石の母よ 禿鷹たちの泡よ

人類のあけぼのに高く聳える岩礁よ

原始の砂のなかに消えうせたスコップよ

ここは住居だった ここは畑だ
そこにたくさんのとうもろこしの実が高く伸び
そしてふたたび赤い霰のようにこぼれ落ちた

ここでヴィクーニャの毛からつむいだ黄金の糸は
恋人たちや 墓や 母親たちを包み
王や 祈祷師や 戦士たちを包んだ
ここで夜人間の足は 肉食鳥の高い巣のほとり
鷲の爪のそばで休んだ そして明け方
彼らは雷鳴の足どりで消えゆく霧を蹴散らした
そして彼らは大地と石を知りつくしていた
夜や死のなかでも見分けのつくほどに

わたしはじっと見る 衣服を 手を
潺潺と窪みを流れた水の跡を
ひとにさわられてなめらかになった壁を
そのひともわたしの眼で地上のランプを見
わたしの手で消えうせた板に油を塗ったのだ
衣類も 革も 壷も 言葉も ぶどう酒も
パンも みんな消えて土に還ってしまったから

そして大気は オレンジの花の手で
すべての眠ったものたちの上を撫でて通り過ぎた
数週の 数ケ月の大気 千年の大気が
荒あらしいアンデスの青い風が
踊りまわる心よいステップの嵐のように
孤独な石の城砦をみがいてきたのだった

(パブロ・ネルーダ 『マチュ・ピチュの高み』)