千曲川

大島博光記念館へようこそ。
長野詩人会議が中心となって建設運動をすすめ、2008年7月にオープンしました。
愛と抵抗を歌った博光の詩の世界にふれていただけます。


われわれはピノチェトを歓迎しない
                            大島博光

ピノチェト─チリ人民の血にまみれた男
いまもなおチリ人民の血が その手から
やすみなくしたたり落ちている男
われわれは この男のことを忘れていない
この男の悪どさを忘れることはできない

なぜなら あの一九七三年九月十一日
ニューヨークの狼どもにけしかけられて
チリ人民連合政府に おそいかかり
チリ人民を血の海に投げこんだのは
ほかならぬ この男なのだから

この男が こんど日本にやってくるという
それも日本政府の招きでやってくるという
しかも日本の大臣は 黒を白と言いくるめ
羊たちを食い殺した狼の仕業を民主化と言い
その狼を鳩だと 言いふらしているのだ

われわれはこの男の悪どさをよく知っている
この男は 子供たちからミルクをうばいとり
愛し合う恋びとたちをひきはなし
神かくしのように人びとをひっとらえ
死体を海に投げこんでいるのだ

この男はネルーダの家を土足で踏み荒し
その詩集を焼き捨てその死を早めさせた
この男はヴィクトル・ハラの手をうち砕いて
二度と 自由のこぶしを高くあげることも
ギターを弾くことも できないようにした

夢を殺したこの男を われわれは歓迎しない
人類の宝であるところの書物を焼き払い
たくさんの人びとを殺したり 追い出したり
詩や絵画や音楽を抹殺する男を歓迎しない
こんな死刑執行人を歓迎することはできない

<「赤旗」1979.9.9>