ここでは、「詩」 に関する記事を紹介しています。
千曲川

大島博光記念館へようこそ。
長野詩人会議が中心となって建設運動をすすめ、2008年7月にオープンしました。
愛と抵抗を歌った博光の詩の世界にふれていただけます。


天に昇った魂はいま
                      八町敏男

あの日の空は時折のぞく晴間のなかに
雪の混じってくる寒い日でした
春まだ浅く 雪解けの待たれる日々でした
けれどもあの突然の出来事が起こることなど
誰が予想したでしょう
日々の慎ましい暮らしにあった人々の生命を
一瞬にして呑み込んでしまうという暴挙を
自然災害という一言で伏せてしまうには
余りに非情すぎる出来事というしかありません

人間は地球から生まれ
人間の生命の重さは何物にも代え難いと云われるが
地殻変動の脅威の前には
ただ無抵抗のままにひれ伏すしかないのでしょうか
人智の及ばない地表変動に
人間の生命は翻弄されるしかないのでしょうか

突然断ち切られた生命たちは
余りに理不尽な災厄の到来に
未だ消えやらぬ思いを
崩壊した住居や車や道路に
留めていることでしょう
住み慣れた家や 生活を支えてくれた車を
どのようにあきらめよと云うのでしょう

しかしどれほど悲しみ 恨んだとしても
事態は元には戻りません
生き残った人々
生き残った家族に
自らの想いや夢を託してください

空に昇って鳥になられたあなた方の魂は
肉親や隣人たちの生き様を高い位置から
静かに見守っていて下さい
彼らの強い意志力によって
必ずや荒廃した土地は復興を遂げてゆくでしょう
家族の団欒は戻ってこなくても
あなた方の切なる願いが
次の世代に新たな家族の絆を
うみ出させるでしょう
そのときが訪れるまで
空の高みから見守っていて下さい

<4.10 長野詩人会議 詩を読む会にて発表>

 瓢 箪
                   八町敏男

〝瓢々を旨とし
 小事にこだわるべからず〟
瓢箪を愛好する人々の集う
「全日本愛瓢会」という会があり
その会訓の初めに掲げられた名言である

昨秋、その会員の一人で
兵庫県に住む旧友から
瓢箪の種子が送られてきて
今春、そいつが芽を出し
小さな畠一杯に所せましと蔓を伸ばし
幾つかの実を結んだが

考察してみるに 自分は
小事にこだわらない人間どころか
小事にこだわって大局を見逃してしまうという
損な性質なのだ

失敗も多く
大らかにゆらりゆらりと風の吹くままに
身をまかせるような
広い心のゆとりが欲しいものと
たわわに完熟していく大瓢箪を眺めつつ
一人想っている

<「狼煙」第66号>

ひょうたん

詩



(「しんぶん赤旗」2009年5月1日)

津田沼九条の会の小島先生が「大島博光記念館ツアーを歌って」を詠みました。
空を流れる雲を見る
             さよ

風の流れのままに泳ぐ白い雲

自分の意思では泳ぐ事など出来ないというのに・・・

私に自由だと思わせる

人間はたくさんの人の中で
周りに流されて
皆と同じに生きるのは
とても自由だとは思えないのに
流れる雲を自由だと思う

私も沢山の人たちの中で
案外自由なのかな?
 無言歌
            御子柴昭治

冬の太陽は
力ふるうものへのやさしい無言歌
  幾何図形のテラスに
  群れ どよめく
  課業終えた若者たち

  君らの眼ざしは
  どこに通じているのか
  古風な学校 葡萄酒はにがい

冬の太陽は
うるわしきものへのやさしい無言歌
  豊かに髪を束ねた娘よ
  夏のある日
  お前は梨の実に袋をかぶせていた
  そして 今朝
  お前は粗末な瀬戸の壺に
  かがやくつるうめもどきの枝を飾ってくれた

冬の太陽は
たたかうものへのやさしい無言歌
  
  君らよ 一日を軽蔑するな
  わなは しかけられている
  霜がみどり葉を黒くおかすように
  
  君らよ 自由を守れ
  君らの額よ
  白い波のくだける防波堤となれ

冬の太陽は
すべてのよきものへのやさしい無言歌
     
                   (1962年8月「角笛」23号)
白い壁

石関みち子

雪の北アルプスが聳(そそ)り立つ
昭和一九年秋、松代大本営工事の為
朝鮮から強制動員されてきた人
すぐ駄目になる地下足袋にボロまいたけど
あの壁ではとても逃げられない

(詩集「吾亦紅」)
2008.11
fusaeさんが博光の手紙をもとに歌を作り、長野コンサートで歌って下さいました。

歌うように


~大島博光記念館コンサートに寄せて~

fusae


はじめてお会いした時 覚えていますか?
すでにあなたと会うことはできないけれど
わたしの心も身体もあなたの優しさでいっぱいになった日でした

あなたの生きた証に触れながら
とても嬉しくて甘ずっぱくて子どもになった
できることならお会いしたかったけれど あなたの作品で感じます


息をするように つぶやくように 叫ぶように
夢みるように 愛するように たたかうように
泣くように 吐き出すように そして歌うように書き連ねてゆく

(日日の)天気のように 吹く風のように その日の(おのれの)心(気分)のままに
想いのまま(に)思考のまま(に)詩人は書く
目まいを書く 酩酊を書く めざめを書く
生のために 未来のために


言葉とはなんと儚く美しいものでしょう
あなたを知ることが出来て本当によかった
博光さん、ありがとう

1008.11.28