軍国主義・侵略戦争

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千曲川

大島博光記念館へようこそ。
長野詩人会議が中心となって建設運動をすすめ、2008年7月にオープンしました。
愛と抵抗を歌った博光の詩の世界にふれていただけます。




アジアは見た



(『詩人会議』1996年1月 96新年作品特集、「大島博光詩集1995〜2003」)

木々


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三好十郎「山東へやった手紙」について
                                     大島博光

 甚太郎オジサン
 コノ袋ノ中ニワ
 仁丹ト ウカイ散ト
 手ヌグイガ入ットル
 ・・・
 ウカイ散ワ
 腹ノ痛カ時二飲ムトデス。
 ソシテ 甚太郎オジサン
 剣ツキ鉄砲デ
 突キ殺ロサレンヨーニシナサイ

 こういう書き出しではじまる、三好十郎の「山東へやった手紙」は、昭和二、三年の「山東出兵」に動員された「甚太郎オジサン」に、貧農の少年が、慰問袋といっしょに送った手紙というかたちをとった詩です。山東出兵」は、日本帝国主義が国内の深刻な経済恐慌を解決するはけくちとして、おし進めていた中国侵略の段取りだったのです。蒋介石の国民政府軍の北伐が、日本の中国支配の根拠地である華北、とりわけ満州に及ぶのをくいとめるために、居留民の「現地保護」を名目として干渉し、出兵したもので、それはやがて、昭和六年の「満州事変」からその後の日中戦争へと発展してゆくのです。国内では、経済恐慌とともに高まった革命運動、労農運動にたいして、「三・一五」のような大弾圧が行われたのです。
 この詩は、そういう時代のきびしい情勢を背景として書かれたもので、貧農の苦しい生活をつぎのように生きいきと描いています。

 ・・・
 今年カラ田植エノ手伝イヲシタノデ
 腰ガ折レソーニ痛カッタ。
 シカシ 土手ガ切レルト
 又 田ガ メチャメチャ ニナル
 スルト 米ガ オサメラレンケン
 地主ノ鬼ガ イジメル。
 米ヲ作ルノワ 僕達デ
 ソレヲ取ルノワ 鬼ダ。
 暗イ土手ノ上カラ
 暗イ大川ノ水ヲ ジット見テ
 ミンナデ ヂット 立ッテイタ
 僕ワ 泪ガ出ソーニナッタ。
 水ガ ケダモノミタイニ
 ウォーウォー ト言ッテ流レタ。

 侵略の先兵として山東へ駆りたてられた「甚太郎オジサン」も、こういう農村の、めざめた若者のひとりだったのです。

 ホントノ敵ワ支那ジャナカ
 殺サンナランノワ 外国ニワ居ラン
 ソイデモ出征セニャナラン
 支那兵ヲ殺サンナラン
 オジサンワ、ソー言ッタ
 シカシ ヤッパリ殺シテイル
 歯ヲ食イシバッテ殺シテイル。
 甚太郎オジサン
 殺サンゴトシナサイ
 殺サンゴトシナサイ

 ここからは、きびしい検閲制度の下で、貧農の少年の口をとおして、声いっぱいにあげられた戦争反対の叫びをききとることができると思います。それは、みずからの矛盾に苦しみながら、こんにちの言葉で言えば、「日中人民不戦」の連帯と、それに敢然とは反対できぬ良心のいたみとをせつせつと訴えてもいるのです。
(自筆原稿)

*三好十郎「山東へやった手紙」は『戦旗』4号(1928年8月)に掲載された詩。

本牧市民公園
本牧市民公園(上海横浜友好園)横浜市

 一九四〇年の若者たち
                        大島博光

  戦争反対を叫んだ者は
  みんな牢獄にぷちこまれた

  そうして口には猿ぐつわ
  眼と耳には大本営発表

  赤紙一枚で駆り出された
  戦線へ

  殺し 殺された
  戦場で

  軍神に 祀られた
  靖国で

  そうして五〇年後のいまも
  侵略戦争を担わされる

  蟻地獄のような仕掛けで
  うむを言わせぬからくりで

  自由をうたった青年たちも
  平和を叫んだ若者たちも
                       ′
(大島博光詩集1995)

海
ペテン師ども

口から火を吹く ペテン師ども
ニセ金づくりのペテン師ども
ひとを煙に巻くペテン師ども
まやかしで ニセモノをホンモノだという
   *
黒い鴉を 白い鳩だという
   *
いちばんあくどいペテン師どもは
よその国に基地をおき
勝手放題に難くせをつけるペテン師どもだ
おれの戦争について来いなどと
   *
献金というワイロで
権力をとり 権力をふりおまわすペテン師ども
あばれ者 やくざ者 横暴な ならず者
それにくっついてゆく新入りを
ちんぴらと言う

(博光日記1997年)

安部記事
(東京新聞2015年5月15日朝刊)
 戦争の古傷 
                   大島博光
 
五〇年後のいまも戦争の古傷が叫びをあげる
アジアのいたるところから噴きあがってくる

娘たちが故国の野から町から狩り出された
戦場の野獣どもの檻のなかに投げこまれた

娘たちは人間そのものを犯され踏みにじられる
とり返しようのないものが汚され奪いとられる

娘たちは老女となって痛み恨みの声を震わせる
五〇年後のいまもなお血の叫びを投げつける

狼どもは言を左右にしてとり合おうとしない
狼どもが忘れようと 踏みにじられた羊は忘れない

侵略戦争を呪う声がだれの耳にも聞こえてくる
アジアのいたるところから湧きあがってくる

(大島博光詩集1995-2003)


鋤